| サブコンの装着に成功し セッティング自由自在!
従来のSRなら何種類も高性能キャブレターが用意されていたから、チューンナップの仕様にあわせていかようにも対応できたし、キャブセッティングの方向性もある程度確立されていたが、SRのFIに関してはまったくの白紙状態・・・。
FIをセッティングするにはバイクのエンジン制御用のコンピュータ(ECU)をそっくり取り換える「フルコン」と、ノーマルECUの燃料噴射を補助的に補正する「サブコン」の二つの方法がある。フルコンはレースでワークスマシン等に用いられるが、コストも手間も膨大。一般的なサブコンが現実的だが、じつはSR用のサブコンは存在しない。コレがニューSRのエンジンチューンを躊躇させる要因のひとつだ。
我々のニューSRプロジェクトも、そこが大きな障壁となっていた。しかし強力な助っ人が現れた。ダイノジェット東関東の代表、大網猛さんだ。FIセッティングでもっともメジャーなサブコン「パワーコマンダー」を熟知した大網さんが、ニューSRに構造的に近いヤマハのWR250R用のパワーコマンダーVが使えるのではないかと予測。配線類を加工して装着してくれたのだ。このノウハウは脱帽モノだ。
まず400ccノーマル状態で、シャシーダイナモ上で何度もエンジンを回して空燃費(エンジンが吸入する空気とガソリンの比率)を計測し、パワーコマンダーVでスロットル間度とエンジン回転数のポイントごと(回転上限が7000回転のSRでも調整ポイントは270に及ぶ)に燃調を補正。そして実走行の結果、ノーマルでも確実にパワーとトルクが向上し、シングルらしい乗り味への変化が確認できた。話は前後するが、パワーコマンダーによるFIセッティングの可能性が見えたことで、エンジン本体のチューンナップ(AAAによる500アップ)に着手できたというのが事実だ。
ちなみに400ノーマル状態(パワーコマンダー装着順)の空燃費は、全域でかなり薄い状態。排ガスなど様々な縛りがある中では当然かもしれないが、少々パンチにかけるのも事実で、パワーコマンダーでの補正値は最大で25%(ノーマルの燃料噴射量の25%増し)にも及んだ。
そしてAAAの手により500ccに排気量アップし、オーヴァーレーシングのフルエキゾーストを装備した状態で再セッティング。排気量が100ccも拡大し、圧縮も8:7から10:5に高まったエンジンは、さらに燃料の増量を要求してきた(最大でノーマルより35%も増量したポイントもある)。やはりF1セッティングなしでは、エンジンチューンは不可能なのだ。そして結果は上のグラフ。パワー、トルクともにピーク値はもちろん、全域に渡って増大しているのが確認できた。
・・・と、ここまで読んで「やっぱりFIは手に負えない」と感じた読者も少なくないだろう。たしかにエンジンに合わせた基本セッティングを出すまでは大網さんのようなプロのノウハウと設備が必要。しかし、F1のメリットはここからが本番だ。
キャブレターの場合、セッティングを変更するにはキャブを分解してジェットやニードルを交換したり、ドライバーでスクリューを回したりと実作業が伴う。しかしFIの場合は、パワーコマンダーの制御ソフトをインストールしたパソコンさえあれば、手を汚さずに瞬時にセッティング変更が可能なのだ。いったん基本セッティングさえ作ってしまえば、後はワインディング等で実走行しながら、「このスロットル開度でこの回転域をもう少し濃い目に・・・」といったセッティング変更が簡単に行えるわけだ。もしセッティングが合わなくても、元に戻すのものも瞬時だ。
このFIセッティングの面白さは、一度でも体験したら病みつきになる。ニューSRのFI化は、バイクの楽しみの幅をいっそう広げたと言える。
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パワーコマンダーVはスロットル開度(表の横軸)と回転数(縦軸)できめ細かく燃調を補正できる。表の数値はそれぞれのポイントでのノーマルの燃料噴射量に対して、何%増量するかを示している。 |
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